広島県呉市の浄土真宗本願寺派のお寺・明法寺に併設された納骨堂「三聲苑二尊堂」の写真撮影。
明法寺の息子でもあり建築家の熊谷和を筆頭に、Archtank 林恭正、小島慎平によるチームで設計された。
「三聲苑二尊堂」は仏縁を得るために枯山水に屋根をかけ仏縁を得るための合祀墓であり、明法寺のもつ立派なルーフスケープと呼応した建築となっている。
▼曲面屋根が境内のルーフスケープと呼応する
明法寺の本堂は、映画のロケ地にも使用されるほど立派な荘厳な佇まいをしている。境内の端にあった枯山水の庭に三次元曲面にかけられた銅板屋根は、明法寺にもともとあったかのように馴染みながらも、スケール感・素材やむくりによって異彩を放っている。



▼やじろべぇのように華奢な脚が支える
4本の華奢な脚で大きな曲面屋根を支えた構造は組手をつかって大きく見せる社のようで、小さいながらも存在感のある建築となっている。中には棺が8基収めることができる。



庭と墓 「平生業成」という言葉がある。平生に往生の業事が完成するという親鸞聖人の言葉だ。 平生とは生きている今のことであり、陽が昇り沈む、葉が紅く染まり落葉する、森羅万象の現象そのものである。 広島県呉市で400年続く浄土真宗本願寺派 明法寺。 その境内にある枯山水の庭に、日常的に訪れることができる合祀墓を建築した。 「墓とは故人のためのものではなく、残された人のためのものである。」これは、父でもある明法寺の住職の言葉だ。 そこで、残された人たちが平生を感受し、仏縁を得るための墓として、枯山水に屋根を建築することにした。余計な斜材などは設けず、格子グリッドのみで外乱に抵抗できる立体嵌合接合形式とした屋根構造は、その三次元格子の中にさまざまな隙間や陰を生む。 ここに集まるお骨はいきなり地面に埋蔵されるのではなく、その構築物の陰(隙間)に一時的に安置されることとなった。 呉の造船の歴史を彷彿とさせる曲面屋根は境内のルーフスケープと呼応し、庭の周遊により佇まいを、時の移ろいにより表情を変える。 朝日に輝き、夕暮れに染まる屋根。紅く染まり、落ちる楓。この庭のあらゆる現象が、そこで人々偲ぶ様々な想いを受容する。 この屋根は遺骨を埋蔵するものではなく、 故人を偲ぶために日常的に訪れることのできる記号であり、この庭は訪れる人が新たな仏縁を得るための場所なのである。 枯山水という小さな宇宙が、新たな墓の形式となることを願う。
▼ArchTank
今回の明法寺 三聲苑二尊堂プロジェクトのメンバーの林恭正がArchTankという設計チームとして独立を果たした。熊谷和は、もちろんMiKSの吉崎努もArchTankに加盟し、今後もArchTank主催のプロジェクトに関わっていくことろなった。
彼は大学からの友人。プロジェクトごとにメンバーをアサインすることが特徴のArchTankの繁栄を願っている。


Photo
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Myoho-ji
2022
設計 / 林恭正 ArchTank 熊谷和
小島慎平
撮影 / 吉崎努 MiKS inc.