top of page


2025
クライアント
株式会社森八
アートディレクター
中宮千里(森八)
デザイナー
吉崎努(MiKS)
印刷・施工協力
奥田染色・宝来社
400年後も、新しい。
加賀百万石の城下町・金沢は、茶を始めとする和菓子の文化が街全体に息づくまちです。その中で最も古い歴史をもつ和菓子屋・森八は、2025年に創業400周年を迎えました。1625年の創業以来、幾重もの時代を越えながらも、今もなお柔軟に変化し続けている——その姿勢は、400周年のスローガン「400年後も、新しい。」に象徴されています。
代表銘菓である「長生殿」は、藩政時代に藩主前田家への献上菓子として生まれたものです。その精神を現代に引き継ぎながら、創業400周年を迎えた森八は、「400年後も、新しい。」というスローガンを掲げ、伝統を守るだけでなく、“更新し続ける”という意志を明確にしています。
この節目の年に、MiKSではひがし茶屋街の2番丁・3番丁の2店舗のディスプレイ計画を担当しました。プロジェクト全体のアートディレクションを担ったのは、森八の若女将・中宮千里氏。全国和菓子協会の「選・和菓子職」としても認定される彼女は、若女将であり職人であり、そして柔らかな視点で“これからの森八”を見据えるディレクターでもあります。
ひがし茶屋街という金沢の観光動線上にある店舗では、本店とは異なる機能が求められると考えました。MiKSでは若女将 中宮千里氏とともに、“じっくり選ぶ”よりも、“気配で選ぶ”ような瞬間的体験が求められる場所として位置付け、商品の数や視認性をあえて絞り込み、売場の流れや視線の動線を再設計することにしました。
一新した商品ポップには、日本の暮らしにとけこむ“縦書き”を採用し、グローバルな来訪者にも「日本らしさ」を暗に伝えるデザインとしています。また、英語表記を重ねることで和菓子の味・特徴を簡潔に伝えています。「日本らしさ」を強調するのではなく、にじみ出るよう伝える設計思想を一貫させました。
さらに、森八が長年大切にしてきた和菓子の芸術品ともいえる上生菓子の移ろいを視覚的に伝えるため、春・夏・秋・冬の4シーズンごとにキービジュアルを制作し、店舗サインを季節ごとに切り替えるものとしました。
このプロジェクトにおいてMiKSが担ったのは、若女将 中宮千里氏のディレクションのもと、森八という歴史と精神を“今”の感性に翻訳することでした。伝統を崩すのではなく、「骨格」はそのままに、見せ方・伝え方をしなやかに更新していくこと。
森八の“これまで”と“これから”のあいだに立ち、空間・ディスプレイ・言葉・情報のすべてを編み直し、「400年後も、新しい。」を一歩ずつ体現していくことが、MiKSに託された役割と解釈したプロジェクトでした。
bottom of page